さて、この企画は院内のドクターをはじめ、スタッフと院長の対談(雑談)を通じて患者さんにうちのクリニックの治療のコンセプトや流れ、私の日ごろ思っている事や皆さんの意見をご披露していきたいと思います。
院長:
歯を支えている周りの骨が下がって歯自身がユレてくる。
そして放っておくと自然に抜け落ちる。
この概念はマスコミ・テレビ等で漫画っぽく解説されているので一般の方々にもイメージは出来ていると思います。大切なのは来院された患者さんに「あなたは今この段階(ステージ)ですよ。」と知らせてあげる事が一番大切だと思っています。
衛生士 S:
その点うちの医院は患者さんが分かりやすいように、イラストと院長がまとめた解説、"歯周病完治への道"の資料と両方を使ってお話しするので初めての患者さんでも非常に分かりやすいと思います。
院長:
その通りだと思います。そういう目的の為に書いたのですから。(笑)
大切なのは何度も言うように「あなたは今この段階ですよ。」と教えてあげる事が大切なのです。それが"診断"なのです。
当クリニックの治療の順序は、まずスケーリング(歯石やプラークを取る)、ルート・プレーニング(少し麻酔をして根の周りの食い込んだ歯石を取る)など、初期の治療で済むステージなのか、もっと本格的に治療をしなければいけない段階なのか、その心構えを知って頂き、患者さんに理解していただかないといけないと思っています。
副院長:
昔は院長に言われるままレーザー照射と高周波通電(歯周ポケット内)の処置を行なっていましたが、週ごとに観察していると非常に効き目がある事に驚きました。
チーフアシスト:
患者さんの反応もすごいですね。楽になった、口臭が消えてきた、など皆さんとても喜ばれていますね。
院長:
だからさ、その患者さんの歯周病の進行の程度にあった的確な治療をしてあげればぐんと良くなる!のだよ。
ただし、レーザーや高周波が効くからといって、かなりユレがきている歯にそんな事ばかりしていても仕方がない。手遅れになってしまいますよ。
その辺りは皆さんよく分かっている事だと思いますが・・・。
歯のユレがひどく出ている人には、一刻も早く歯を固定してあげないとダメですね。
食事をしてもユレない口の環境を整えてあげないと手遅れになる。
だから、くどい様だが「あなたは今、この段階ですよ。」と早く診断して教えてあげる事!
ドクター G:
でも治療経験の浅い若いドクター(歯科医師)だと、その歯周病の段階がまだどの段階なのか明確に分からないですよね。
院長:
そうです。患者さんに偉そうに教える前に自分が分からないとお話にならない、と言う事。初診の段階で私が診断を下す事ができるのは、だてに30年近くも臨床をやっているわけじゃないのでね。
あとは私の診断に基づいて先生方がその段階の治療を進めていけばよろしい。
(全ての患者さんを院長が必ず診断、治療をサポートしています。)
予防・予防で騒ぎすぎ!!
院長:
現在、衛生士さんが通う歯周病の講習会は、予防・予防で騒ぎすぎていると思っています。
そこに開業数年の若い先生を乗っかって、これからは予防!『21世紀は予防の時代』と言っている。私は予防を否定しているわけではないですよ。
むしろ徹底的に予防は予防で行なっていると思っています。誤解のないように言っておくと、この辺りは患者さんがよく理解していただいていると思いますね。
うちの患者さんは意識レベルが高いので、ちゃんとメンテナンスにいらっしゃる。
衛生士 K:
確かに予防・予防で盛んです。朝から晩まで予防処置を一年中やらされる医院も多いと思います。
衛生士の仕事はそれだけではないので・・・!
大切なのは予防のスタートラインにたたせる事。マラソンみたいなもの!
つまり、むし歯があったり歯がユレていたりと、予防のスタートラインについていない患者さんまで予防中心で治療が応急処置程度になってしまっている。
院長:
私が言いたいのは、予防とはご自身でやっていただくもの。
主に、歯ブラシや歯ぐきのマッサージ、そして広くは食生活を通じて、強いては自然治癒力のアップして頂く。これが広い意味での予防です。
予防はマラソンみたいなものなので、10年、20年、患者さんにおいては1年ごとの定期健診を受けながら地道に行なっていく事なのです。
ところが、スタートラインに立っていないレベルの患者さんに、いきなり予防だけ行なっても何の意味があるのか。一刻も早くユレを抑える治療を開始しないと手遅れになる。ユレのひどい患者さんにレーザー治療だけ行なっても手遅れになる。ユレがひどいのにレーザー治療だけ1年もの間通わせている医院の話も聞くが、そんなのでは治りません!
スタートラインに程遠く、歯が悪い人を半年、1年がかりで治療してやっと予防のスタートラインに着かせてあげる事ができるのです。
まあ、20歳くらいの初期のむし歯程度の人だといきなり予防でも成功しますけどね。
若い先生方に一言
予防・予防と騒ぐ前にしっかりとした基本技術を勉強する事。一年中の日曜・休日を潰したって習得するのに最低10年くらいはかかる。私はかつて30~40代にかけて15年くらい必死に勉強してきた。先生達にはそれを同じようにやれ!と言っているのではないが。365日の内、休みは20日程度。お盆と正月しか休まなかった。それくらい必死でしたよ。
もちろん、50歳になっても怠けているわけではないけれど・・・。(笑)
なるべく切開(歯周病手術)しないで治す。予防ですむものは予防で!
ひどい場合は歯と歯を動かないように固定して治していく。
院長:
その患者さんにあった治療方法を明確に説明してあげて下さい。
衛生士 N:
そうですよね。慣れていないと沢山説明してしまいますよね。(笑)
でもそれだと患者さんが混乱してしまう。今院長が言われたとおり"あなたへの注意点、あなたの治療"と的を絞って説明する事が大切ですよね。
院長:
その通りです。他の患者さんの話はどうでもよい。
聞きたい事は自分自身がどうか、と言う事。
●治療法
歯周病の周りに出来ている不良肉芽(口臭や膿が出る原因)を諸悪の根源として切り取るか、それとも口の中の環境が悪いので"不良"つまり不良肉芽になったのだ。と、理解して治療に望むか。
この考え方で大きく治療法が変わってくると思います。不良肉芽を敵対視するのが西洋医学、つまり大学を中心とした治療法。私の考えは勿論東洋思想(医学)的な考え方なので、すぐに切りとってしまうのではなく、不良肉芽になってしまった原因から治していく。
この辺りの話は、私の本の「ニュートリション健康法」に詳しく書いてあるので是非とも読んで頂きたい。
80%は切開歯周病手術をしないで治ります。ただ、残りの20%は歯周病手術をした方が早い。これは2割の患者さんという意味より、その患者さんの1~2割の歯にオペが必要だ、という意味が強いですね。